スタジオライフ『トーマの心臓』を観た
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観劇日:6月10日(土)matinee Seeleバージョン @紀伊国屋ホール

10年ひとむかしと申しますが、隔世の感を持って今回の公演を観てきました。原作者である萩尾先生も書いていたけれど、もう卒業していった数々の役者たちを想うにつけ、ただ喜びだけを持って観れないからなのでした。

自分にとってのベストバージョンは10年前のベニサンピットなので、それをどう比べてみても軍配はあがらないのが最近のトーマ@ライフなのですが。自分自身もかつての熱は冷めサポーターも引退したとはいえ、いろんな意味で愛情を持って観ることが出来る楽しみな劇団の1つとも言えます。

しかし!10年前にも観た山本芳樹くんだけは現役!!!もうXX歳なのですね~~。でも当時よりもはまっている感じ。貫禄はあまり感じないが、彼なりのユーリと共に10年があるのでしょうね。でも、もう少し力抜いてもいいような気がしました。背筋は伸びて欲しいが。(爆)

さて過去の役者が素晴らしかったのはなぜだろう。良くも悪くもキャラがたっていた、と思うし。このような繊細な萩尾ワールドを見に来る人たちはおおむね少女漫画ファンで、かなぁり小うるさいんですが、そのお眼鏡にかなう奥深さがあったのだ、と思う。言葉ひとつひとつの裏の意味、見えない家族の歴史や絆や確執による悲しみや愛情を描けないと、アウトなんです。それが描ける役者がそろっていたんだなぁ・・・と。もういない人からあげると、澤さんのサイフリート、児玉さんのエーリク、卒業していった山崎さんのユーリ、笠原さんのオスカー。彼らに10年前に出会った私はなんと幸運だったのでしょう。涙がチョチョ切れます。申し訳ないけれど、今回観劇しながら、時に目を閉じて彼らの亡霊を自分の瞼の裏に置いて、懐古してしまい温かい気持ちになれました。そういった大御所がいない昨今、入れ替わりの激しいベンチャー企業で手綱を引かねばならない倉田さんも大変そうであります。それゆえかそれなりなのか演出も今風になっていたような・・・聖と静のイメージだったトーマの舞台が、ちょぃと別物になってもいました。(特にフェンシングシーンとかね、私は過去のほうがスッキリ古典的で好きです)

って、まったく今回のレビューになっておりませんが。それなりに、おもしろかったです。いまや知ってる役者が半分もいない現状であり、過去のように気合いが入っていない分、とってもラクにみれるのがまず嬉しい。おそらく10代で読んだ漫画の『トーマの心臓』で感じ入った部分とはまったく異質な場所で自然に涙が出てきたことも嬉しかった。素直に泣けましたから・・・。それだけで、ありがとう・・・と言います。



この演目に限り、劇場に入るときに「シュロッターベッツへようこそ~」と物販をしている役者たちから声がかかる。素の場所で言っているほうも恥ずかしいだろうけれど、言われるほうも恥ずかしいので、やめて欲しい。いや、ベニサンピットとかならば小屋からしてそれなりの雰囲気なのでいいんだけど・・・(当時は言ってなかったような・・・)紀伊國屋ホールでっせ。すぐそこ本屋なんですけど~~~。似合わないでしょ。それにやたら制作やらの普通の人たちも立っているしね。かなり厳しいです。

では主な方たちだけザザッと。ユーリとオスカーのからみが大好きな私にとって、この役者二人は完全にダメなんです。芳樹&研一コンビのことです。研一が、かなぁりふぬけたHugh Grantに見えてくるし、滑舌は昔より良くなったにしても、なんか投げやりでワルな性分にしか見えないのでありますです。芳樹ユーリは、優等生には見えるんだけど、ユーリたるゆえんという将来の成功をうちに秘めたキリリとした感じに欠ける。ただの軟弱っぽい。あー、以前も同じこと書いたような記憶が。松本エーリクは無難。髪型が変。キャラたっていない。ものすごく観ていてラク。何も感じないから。エーリクのわがまま坊やっぷりは、口をとんがらすだけでは無理なんだけどね~。これも滲みででこない。バッカス船戸はそれなりに。ハイ。いいんです。キレイじゃなくていいし、この人は。アンテねぇ、かわいそうなアンテなんですが・・・・。古田アンテはそんなにかわいそうに見えなかった、ざまあみろみたいな。どうしてでしょうか。藤原校長はあいかわらず無難です。きっと無難過ぎて本人も飽きている、そんな感じ。息子のせいで、ラストシーン泣けない場面になっちゃうしねぇ。女役シェリーは大ちゃん、キレイです。あいかわらず、でかいけどキレイ。でもどうみてもユーリのママには見えませんが。あ、ユーリはパパ似だった。ばあちゃん寺岡はこれまたつまんないですね。あまり憎しみは伝わってきません。アデール石飛、貫禄ありまくりです。トーマの母というよりもおせっかいにも出てきた親戚のおばちゃんって感じです。なんなんでしょうか・・・。トーマパパ主宰はいわずもがななので、書きません。ここのシーンだけ別の芝居小屋からの中継はいりました~な雰囲気でございました。wow

さて特筆すべきは、影ながら吸血鬼時代からファンな甲斐さん。なぜ好きか・・・と言われるとハンサムだしうまいから、としか言えませんが。鞭打つブッシュ先生の老人っぷりも圧巻だったし。もうユーリ・シド・シュヴァルツは最高です!!!彼に心を開くエーリクのシーンは大好きなんだけど、これまた甲斐さんが演ずると二度泣けます。役者ってホントはこうでなくては!と思わせます。このメンツで褒められても……でしょうが。

さて、特筆第二弾は、林レドヴィです!もういっちゃっているストーカー、危ない手癖男を完璧に演じています。いや、原作よりもかなり変な人になっていますし、倒錯も相当入っている。でもうまい。石飛レドヴィ路線は美しくて原作とは違うけれど、それなりに好きだったのですが。林レドヴィは観ていて唸りました。こんな人同級生には欲しくないよ~~~でも、きっとすごく繊細でいいヤツなんだろうな、という感じ。石飛レドヴィはホントはいい人じゃなさそうだったけど。

さて、ラストを飾るのは舟見サイフリート!書き間違ったんじゃござんせんことよ、奥さん!舟見くん、きっと新境地を見せたかったんだと思うのだけど。完全にコケ。怖くない。気持ち悪い。変態。サングラスしてると、YOSHIKIか!なんだけど、グラサンとるな~~~!!!即・澤サイフリートに置換してしまった私。失礼しました。でも、どうよこのキャスティング。人手不足も甚だしい感じです。これファンの集いの余興?じゃないよね~~~

ということで、大変楽しんで参りました。あ、その他大勢については下手でも無いけど、特によくもない、、、といったところです。おもしろくないことも無いけど、おもしろくもないし。あ、最初の「シュロッターベッツ始まって以来の劇だって・・・」が「劇」に聞こえたくらいかな。(って褒めてないし)

さて、久々にアヴェマリアを聴きながら、漫画を再読してひたるとします。ついでに初演のパンフなども眺めてしまおうっと。
Top▲ | by bonneidee | 2006-06-11 18:19 | review
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